この歳で新しい世界に行くのは本当に心配だったけど、かなり疲れを溜める仕事だったから転職した。どんなに居たくても、しなきゃいけなかったのよ。仕方ない。
…私はある地方都市のダンプ運転手。前はダンプじゃなかった。配達業で4トンと7トンの運転手だった。
「これ以上もう出来ません!体が壊れる前に辞めます」
それを会社に言ったら、「給料は下がるけど部署を変えて、親しい社員と出来ることをやらないか?終了時間も夕方とか午前中までとか、都合のいい時間で決めてもらっていいし」と言われた。それはとても有難い。でも社員じゃなくなる。どうしようか…。
移動するとしたらあそこか…それともここか。どっちにしても体力を使うことに変わりはない。人は良くても、やっぱり自分にできる仕事は無さそう。時間を減らしてもいいって言うけど、給料だいぶ下がるしな…。
じゃあ、今更転職して、果たしてイチから覚えてやっていけるのか。年齢もあるし、おばさんの新入社員なんて受け入れてくれるんだろうか?ちゃんと覚えられる仕事かどうかも不安だ。
人間関係は?今くらいの給料を貰える会社なんてそもそもあるのかな?
どっちも天秤にかけて、やっぱり転職することにした。
給料が下がるのだけは非常にまずい。出来なくなることが多すぎる。子供もまだ巣立ってないし、老後の準備もできない。そして行動とメンタルの自由がなくなるのが一番いけない。会社に残る選択肢は嬉しいけど、お金のデメリットだけは受け入れられなかった。これはチャレンジするしか…。もう後は無い。
で、すぐに転職サイトに登録した。大概は労働時間や内容と給料が釣り合わない会社ばかりだったけど、未経験でも可、で1社だけすっかり条件が合う会社が見つかった。良すぎて、逆に人間関係を疑った。でも行ってみるしかない。手をこまねいていたら枠が埋まってしまう。それで即電話、面接を決めた。悩んでたって、人に関しては入社してみないと分からない。
一月後、タイミングの問題か、運も働いたか、なんと一回で採用され、しかも給料は少々増える、という願ってもない合格となった。
条件は最高。でも、根掘り葉掘り聞かれた「異例の面接」
とにかく辞めない人員を慎重に探しているようだった。
面接では、学生時代からの勉強内容や仕事全てを聞かれて、転職遍歴の理由も細かく聞かれた。かなり根掘り葉掘りだったけれど、あらかじめ、会社の規定での質問だから気を悪くしないでくださいと、面接前に言われていたから、しょうがない。
前職、過去の職をなぜ辞めたのか、理由は?。学生時代に取った資格でどうして働かないのか。過去の動きをすべて確認されたけど、一つ一つ理由があったし、説明すれば何の引け目を感じることもない。全部詳細に話して、納得もしてもらえた。と思ってる。
その中の質問をちょっと紹介。
〇うちのほかに面接を予定していますか?(それは何回か念を押して聞かれた)
「こちら意外にどこも面接予定などはしていません」
〇もしうちが受かったら、どのくらい働くつもりですか?何歳まで、もしくは何年間と決めてらっしゃいますか?
「体が動く限りはずっと働きたいと思っています」
〇もし受からなかったら、逆にどうされる予定でいらっしゃいますか?一旦前の会社へ戻られるのですか?今の会社は辞める予定をたてているのですか?
「今の会社は〇月〇日をもって辞めると伝えて許可を得ています。最後の日は〇日で、そこから退職日までは有給です。もし受からなかったら、その場合は仕方ありませんので、一刻も早く別の会社を探します」
〇じゃあ、辞めることは本当に決定なんですね。もう一度聞きますが、ここ以外にどこか面接を予定されていませんか?いや、していても全く問題は無いんですが。
「してません(なんで信じてくれないのかな?だって稀に見る好条件だったし)」
なぜ、質問に「自分評価ほぼ満点」で答えられたのか?
面接中は緊張しっぱなしだったものの、終わってみると、出し切ったかな、という気持ちが湧いてきた。なにげに、しっかり答えられたんじゃないの?と思えた。
もしかしたらあの執拗な質問攻めは、会社側が「50代未経験の覚悟」を本気で試していたのかもしれない。人手不足の業界、来るなり採用?それか慎重になるかの2種類ありそう。知人の話も聞くと。
この面接を突破できた理由を、自分なりに考えてみると、3つくらいコツが見えてきた。
・過去のキャリアの「一貫性」を説明できた
転職回数が多くても、それぞれに「なぜその選択をしたのか」の正当な理由を引け目なく説明できれば、経験として失敗はあっても、跨いだ業界が違ってても、それはマイナスではなく「ここへ来るまでの自分自身の物語」になると思う。
・「逃げ道」を断っている姿勢を見せたこと
「他は受けていない」「前の会社には戻らない」という退路を断った発言が、会社側に「この人は本気だ、すぐに辞めない」という強い信頼感を与えたのだと思う。
・年齢を言い訳にしない体力と就労意欲のアピール
50代の気持ちとして、これ以上転職したくない、辞めたくないという思いが、「体が動く限り働く」というシンプルな一言になったかもしれない。
50代の転職面接では、綺麗事の志望動機よりも、ひたすらお金が欲しくて、それ以外の目的なんて特になくていい、という稼いで働く意思と「しぶとい覚悟」を淡々と伝える方が、やる気として見えやすいし正当性があるのかも。
合格、そして完全アウェイへの世界へ?!
ただ、実際就職してからは本当に大変だった。
社員に対して自己紹介も無いという、まさかの始まり!
完全なアウェイからのスタート。でも、ここで腐ったら負け。次回は、この『誰も声をかけてくれない現場』で、謎のお爺さんたちの生態をちょっとだけ明かそうかな。
